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「学習の転移」を職場に活かす

名古屋生まれ メンタルヘルスケアサービス(EAP)の ユース.ウェルネスです。

ある学習が他の学習へと影響を与える現象を「学習の転移」といいます。うまく活用できれば企業での人材育成にも役立つ概念です。

今回は、「学習の転移」の概要や具体例、活用するためのポイントについて紹介します。

目次

1. 「学習の転移」とは

2. 教育学・認知学の変遷から見る「学習の転移」が起こる条件

3. 職場における「学習の転移

4. まとめ

1.  「学習の転移」とは

「学習の転移」とは、過去に学んだ知識や習得した技術、経験などの学習が、その後の新たな学習に影響を与える現象を指します。

正の転移/負の転移

「学習の転移」の基本的な分類が「正(=プラス)の転移か、負(=マイナス)の転移か」です。 「正の転移」は、先行学習が後続学習に対して良い影響を与える転移です。例えば大学で学んだマーケティング理論が就職後の営業企画に活かされたり、英会話の能力が輸入業務に活かされるなどがあります。 これに対して、先行学習が後続学習を阻んでしまうのが「負の転移」です。例えば英会話で日本語の文法にひきずられて誤った構文になるような現象です。 効率よく学習内容を身につけるには、「正の転移」を促進し「負の転移」を防ぐことが重要です。

2.  教育学・認知学の変遷から見る「学習の転移」が起こる条件

「学習の転移」が起こる条件については、はっきりとした結論が出ておらず、さまざまな議論がなされています。

ソーンダイクによる提唱

ソーンダイクは、先行学習と後続学習の間に類似性がある場合、学習の転移が起こると主張しました。

 これに対して、ジャッドヴェルトハイマーは、転移は学習内容の類似性ではなく、学んだ一般的な原理・原則が後続学習にも適用できる場合に起こるとしました。

レイヴらによる批判

レイヴらは研究で、一般的学習が日常生活のスキルに転移している根拠は見られず、むしろ日常での活動(仕事、生活)によって知識やスキルは蓄積されていくと主張しました。学校教育の意義の否定にもつながりうるインパクトの強い考え方です。

近年の研究による新たな見解

エングルは、頭の中に知識が蓄積されているだけでは転移は起こらず、知識を活用する文脈が重要だと主張しました。

シュワルツは、ある学習がそのとき最終的な成果につながらなくとも、将来的に他の学習を行い、新たな課題を解く際の準備となり転移が起こる長期的な観点を主張しました。

3.  職場における「学習の転移」

「学習の転移」は、学校などの学習の場だけではなく職場でも起こります。

業務経験と学習の転移

仕事をするうえで常に起こっているのが、業務経験そのものによる学習の転移です。例えば、営業部門から人事部門へ異動した社員が、営業職で培った「売り込む」能力を活かして、就活生へ訴求力のある採用活動を行うケースが挙げられます。 配置転換による人材育成も、広義ではこの業務経験による「学習の転移」と言えるでしょう。

研修と学習の転移

研修で学んだことを実務に活かすことが出来た場合、研修による学習の転移が起きたといえます。研修は、費用や時間を投資するわりに、やりっぱなしになっている事が多いのが実情です。せっかくの投資を無駄にしない為に「研修による学習の転移」を社員のスキルアップにつなげるポイントを紹介します。

「研修による学習の転移」で禁物なのは「学習の転移はひとりでに起こる」という考え方です。 そもそも研修で学んだことの60%から90%は、その後の業務に活かされないとも言われています。組織が研修を「通常業務とは異なるイベント」ととらえ、研修後の業務への活用を参加者の自主性にゆだねていることが挙げられます。組織として「学習の転移」を促すための仕組み作りを積極的に行い、研修での学びを実務へつなげていくことが重要となります。

その為に職場での活用までを見越して研修をデザインする必要があります。

①研修成果の定義

最初に必要なのは、「その研修はどのような成果を得ることを目的としているか」の定義付けです。漫然と「社員の能力向上」を目標に挙げるのではなく、事業戦略に対応した具体的なパフォーマンスまで落とし込んで設定することで、実務との結びつきを高めることができます。

②受講前後を含めた学習経験のデザイン

研修内容の企画では、研修時間だけでなく、その前後も含めて学習の経験を組み立てることです。研修の事前準備から、終了後の振り返りまでの一連の流れで、「求めるパフォーマンスの向上」につなげる仕組みをデザインし、研修をその場限りのイベントではなく、実務と地続きのものとして位置づけることが重要です。

③実務との関連性を明確にした研修の実施

受講者が研修で学んだことを職場での課題解決に応用できるよう、実務との関連性や活かせる場面について具体的に伝える工夫をしましょう。「なぜその研修を受けるのか」「学ぶ内容が自身の業務改善にどうつながるのか」を、受講者が明確に思い描けることが大切です。

④実務での活用の促進

学習内容を実務に活かすには、受講者だけでなく、その職場への働きかけも重要です。受講者の上司が「学習の転移」を「社員の成長のために重要なプロセス」と理解し、学んだことを活かす場を積極的に受講者へ与えることで、「研修による学習の転移」が適切に起こる可能性は高まります。

⑤職場での活用促進のためのツールの提供

研修終了後の効果的な取り組みとして、実務での活用を促進するために有用なツールを職場へ提供することが挙げられます。学んだことが実行出来ているかを確認できるチェックシートや上司と実施状況を話せる1on1面談の他、人事部のサポート制度などマンパワーに応じて対応を工夫しましょう。「振り返り研修」の実施も効果が期待できます。

⑥研修成果の測定

研修を行った際は、最終的な効果測定が必要です。その研修が提供できる価値を明確にしたうえで、キャリアパス制度や考課・評価制度と連動することで、社員のモチベーションアップにつながります。研修内容も受講者のフィードバックをもらい見直し変更を検討して、さらなる質の向上を目指しましょう。

4. まとめ

「学習の転移」は、人材育成においては非常に重要な意義を持つ概念です。学術的には未だ明らかになっていない曖昧な部分も多くありますが、概略を理解しその考え方を取り入れることで、より効果的な育成施策を検討することができます。

ユース.ウェルネスでは、EAPカウンセリングの他に、各種研修も提供しています。ご要望に沿った効果的な研修の構築をお手伝いさせて頂きますので、お気軽にお問い合わせください。

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