~「畏敬の念」がもたらす心のリセット効果~
目次
1.Awe体験とは何か
「心が震える瞬間」
私たちは日々、仕事・家事・人間関係といった現実的な課題に追われています。その中で、心が乾いたような感覚に陥ることはありませんか。そんなときに注目したいのが「Awe(オウ)体験」です。Aweとは、「畏敬の念」や「圧倒される感動」を意味する言葉で、人が自然・芸術・偉大な人間行動などに触れたときに感じる、心の深い動きのことを指します。
たとえば、夜空に無数の星を見上げた瞬間や、壮大な山々の景色を目にしたとき、あるいは音楽や舞台で魂を揺さぶられるような体験をしたとき。私たちは言葉にならない「すごい…」という感情に包まれます。それがAwe体験です。
心理学者のダッカー・ケルトナーらによる研究では、Awe体験は人間の自己中心性を弱め、「自分が大きな世界の一部である」という感覚を高めることが示されています。つまり、Awe体験によって私たちは自分の悩みやストレスを相対化し、心の広がりを取り戻すことができるのです。現代社会のストレス過多な環境において、Awe体験はまさに“心のリセットボタン”の役割を果たすと言えるでしょう。
2.Awe体験がもたらす心理的効果
「小さな自分を受け入れる力」
Awe体験には、科学的にも多くの心理的効果が確認されています。
第一に、「ストレス軽減効果」です。Awe体験をした人は、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌量が減少することがわかっています。自然の中で感じる畏敬の念は、交感神経の緊張を和らげ、心拍数や血圧を安定させる作用があるのです。
第二に、「自己中心性の低下と共感性の向上」です。壮大な景色や人間の偉大な行動を目にすると、自分がちっぽけな存在に思える一方で、「他者と共に生きている」という感覚が強まります。この感覚は、他人への寛容さや感謝の気持ちを高め、対人関係のストレスを和らげる助けとなります。
第三に、「時間感覚の変化」です。Awe体験をすると、時間がゆっくり流れるように感じるという報告があります。心理学的には、感動体験によって脳内の注意資源が拡張され、「今この瞬間」に集中するマインドフルな状態になるためです。これは瞑想と似た効果であり、心の余裕を生み出すセルフケアとして非常に有効です。
現代人の多くは、効率・成果・スピードを重視するあまり、内的な充足を後回しにしてしまいがちです。Awe体験は、そんな私たちに「立ち止まることの大切さ」を教えてくれる体験でもあります。
3.日常にAwe体験を取り入れる
「心のセルフケア実践法」
Awe体験というと「特別な旅行」や「壮大な自然」といった非日常をイメージしがちですが、実は日常の中にもAweは潜んでいます。重要なのは、「感受性のアンテナを立てること」です。以下に、日常的にAwe体験を取り入れるための具体的な方法を紹介します。
・自然を意識的に感じる
通勤途中の空、街路樹の紅葉、風の音、雨上がりの匂い。日常の中で自然の美しさに目を向ける時間をほんの数秒でも持ちましょう。スマートフォンを手放して、ただ「観る」「感じる」だけでも脳がリラックスし、Aweを感じる準備が整います。
・芸術や音楽に触れる
好きな絵画や音楽、映画などを通じて「美しさ」や「創造性」に心を動かされることもAwe体験の一つです。特に、ライブ演奏や展覧会など“リアルな場”での体験は、共感や一体感を強く生み出します。
・人の善意・努力に注目する
他者が困っている人を助ける姿や、困難を乗り越えて努力している人に触れるとき、私たちは「人間の尊さ」に感動します。SNSでも「感動する実話」などに触れるだけで、Aweの感情が生まれ、自己肯定感の回復にもつながります。
・「はじめて」に挑戦する
新しい道を歩く、新しい趣味を試す、初めての人と話してみる。未知の体験は驚きと好奇心を呼び覚まし、Aweを感じやすくします。心理的には、慣れた日常よりも「予測できない状況」にAwe体験が生まれやすいことが知られています。
こうしたAweのセルフケアを意識的に取り入れることで、私たちは日常に「心のゆとり」を回復させることができます。特に、仕事で疲弊しやすい人や、人間関係でストレスを抱える人ほど、Awe体験は心のエネルギーを補充する強力な方法となります。
まとめ
Awe体験が導く「しなやかな心」
Awe体験は、私たちの心を揺さぶり、視野を広げ、ストレスを和らげる「感情のビタミン」です。忙しい日常の中で小さなAweを感じる習慣を持つことは、心の健康を維持する最もシンプルで効果的なセルフケアの一つです。
「美しい」「すごい」「ありがたい」と感じる瞬間を、自分に許してあげましょう。その瞬間、あなたの中の緊張がゆるみ、自己中心的な思考から解放され、他者や自然とのつながりを取り戻します。
Awe体験は特別な人だけのものではありません。誰にでも、どんな日常にも存在します。心が疲れたとき、少し立ち止まって「世界の大きさ」と「自分の小ささ」を感じてみてください。そこにこそ、セルフケアの原点があります。
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