新着情報

ATCの「受容と行動」で人生をありのままに

「ACT:アクセプタンス&コミットメント・セラピー」(Acceptance and Commitment Therapy)とは、マインドフルネスをベースに「心理的柔軟性」を生み出すことで「心の健康」を維持・回復させる療法です。

「ACT」(アクト)は、「行動すること」を重視する療法ですが、健常者でもストレス対処法として活用できるため、世界的に広がりをみせています。

目次

1. 「ACT」の特徴

2. 「アクセプタンス」と「コミットメント」

3. 6つの基本行動原則

4. まとめ

1.  「ACT」の特徴」

「アクセプタンス&コミットメント・セラピー」(以下、ACT)の提唱者は、アメリカの心理学者スティーブン・ヘイズ(Steven C. Hayes)と、共同研究者であるケリー・ウィルソン(Kelly G. Wilson)、カーク・ストローサル(Kirk D. Strosahl)です。

 これまでの心理療法「コントロール」(操作)を重視していたのに対して、「ACT」は、「アクセプタンス(受容)」(Acceptance)を強調しています。

人間の脳は、危険な目にあったことを、より強く記憶する仕組みになっています。

人間は原始の時代から、「生き残る」ために、危険を察知したり回避したりして、高度に脳を発達させてきました。ある場所で危険な目にあったら、その状況や場所を正確に「記憶」しておけば、もう一度、危険な目にあわないですみます。その生存本能は、時を越えて現代を生きる私たちの脳でも強く働き続けているのです。「忘れないでいること」は、メリットもありますが、現代人にとっては、ストレスとなり健康を損なうリスクにもなります。

 私たちは、「嫌な感情」を追い払ったり、感じないようにしたり、何らかの手段で感情をコントロールすることを覚えました。コントロールには「逃走戦略」と「闘争戦略」の2つ戦略があります。

「逃走戦略」とは、不快な人や場所を避けるたり、好きなことをして忘れようとする回避的になる事です。

「闘争戦略」ろは、ネガティブな思いに反論したり、他人や自分を批判し奮い立たせようとする攻撃的な事です。

 

「ACT」では、コントロール戦略を否定しません。「それをすることで、うまくいくのならば、それはOK」と考えます。どんな技法にもメリット・デメリットがあります。「ACT」も万能ではありません。しかしこれまでの「コントロール戦略」では、効果が現れない事例もたくさんあります。そこで「コントロール」ではない、他の考え方に「ACT」の開発者たちは、注目しました。

2. 「アクセプタンス」と「コミットメント」」

「アクセプタンス」ついて「ACT」の実践家である医師ラス・ハリス(Russ Harris)は、「自分の思考と感情をあるがままの状態にしておくこと。その思考・感情が喜ばしいものでもつらいものでも、心を開いて、それを受け入れる場所を作ること。思考に抗うのをやめ、それが自然と湧き起こったり消えたりするのに任せること」と述べています。

例えば、仕事で心と体に限界が来ているのであれば、その事実を素直に「受け入れる」ことが「アクセプタンス」であり「あるがままの感情」を認めることが「有効性の高い思考法」です。

そうすれば、他人や専門家に相談するなり、休職や病院で治療するなり、人生をよりよくする為の「行動すること」へとつなげていくことができます。

 「コミットメント」(Commitment)には「約束」「責任」という意味があります。「あるがままの感情」を受け入れたなら、よりよい人生にするために、何をするかを考え、その実行を自分と約束し、責任をもって行動にうつすのです。「会社を休み病院に行く」と決めたら、それを実行します。これが「コミットメント」(Commitment)の部分です。

3.  6つの基本行動原則

「ACT」は、「6つの基本行動原則」に基づいてセラピーが進行していきます。「ACT」は「6つの基本行動原則」を通して「心理的柔軟性」(Psychological flexibility)を生み出すことを目的にしているといえます。

【6つの基本行動原則】

「心理的柔軟性」とは、気づきや開かれた心をもって状況に対応し、自分の価値に沿った効果的な行動をする能力です。この「心理的柔軟性」をクライアントにセルフワークや実践を通して自分自身で持つことが「ACT」が目指す目的地です。そのために、「6つの基本行動原則」があります。

 「ACT」は「マインドフルネス」の考え方がベースになっています。「6つの基本行動原則」の①「脱フュージョン」〜④「観察する自己」までは、マインドフルネス瞑想を行う際に心がけることと共通しています。

①  脱フュージョン

 「思考」は「ただの思考」に過ぎないと、しっかり認識することです。私たちの「思考」は、「言葉」と「イメージ」で成立して様々な「感情」がわきおこります。

人は、過去の不快な出来事を思い出したり、頭の中で未来へと時間を進めて不安を想像して、憂鬱な気分に支配されたりします。

自己否定傾向のある人は、小さな失敗でも「私はダメな人間だ」と頭のなかでつぶやき、自分を責め続けます。そして、それが「現実」「真実」だと思い込んでしまいます。するとストレスホルモンが分泌され、憂鬱な状態へと導かれていってしまうのです。

「言葉」と「イメージ」で作られた「思考」が、あたかも現実であるかのように認識している状態が「フュージョン」(融合)です。

 反対に、自分の考えていること「思考」は、それは真実でもないし、間違っている可能性もあると「ただの思考に過ぎない」と、切り離せている状態が「脱フュージョン」です。

脱フュージョン」の技法

例えば、「私はダメな人間だ」と頭のなかでつぶやいて「思考」したならば、嫌な気分になるでしょう。

次に「私は今、「私はダメな人間だ」・・という考えをもった」とつぶやいてみましょう。

 少し違った感じになったのではないでしょうか。この技法はマインドフルネス瞑想で「ラベリング」と呼ばれるものです。「考えていたこと」を言葉にして、「私は今、〜と考えを持もった」とつぶやき、意識を呼吸へと戻します。すると雑念(思考)に巻き込まれている自分に、自分が気づき、「切り離し(脱フュージョン)」が起きます。そこれを繰り返していくことで、思考に動じない状態へと近づいていきます。

「それはただの言葉、ただのイメージ」と、頭のなかつぶやくだけで、否定も批判もしない事が「アクセプタンス(受容)」です。

②  拡張

 「拡張」とは、「意識をオープンにし広げること」です。「自分なダメな人間だ」というネガティブな思考や感情であっても、「コントロール戦略」をとらず、「意識をオープンにして広げて」(拡張)、自分のなかに居場所(スペース)をつくって「私のなかに居ていいよ」アクセプタンス(受容)します。

 「拡張」の技法は、次の4つのステップです。

1.自分の気持ちを観察する:深呼吸をしながら体に意識を向けて「どんな感情があるか」を感じ取る。

2.息を吹き込む:ネガティブな感情に、深呼吸をして、その感情に向けて息を吹き込むようにイメージする。

3居場所を作ってやる:息を吹きみ「感情」が存在できるスペースを作るようにイメージする。

4.存在を許してやる:ネガティブな感情でも「居てもいいよ」「ありがとう」と声をかけ存在を許す。

ネガティブな感情を否定したり批判したりせず「あるがまま」の状態で認めてあげます。

③ 接続(つながる)

 接続(つながる)とは、「今」に意識をしっかりと置くことです。勉強や仕事に集中して「今、すべきこと」につながっている状態です。接続を失って意識が散漫では、時が無駄になり、能率は下がります。

ラス・ハリスは、「接続」を目覚めること、起こっていることに気づくこと、世界に参加すること、人生の一瞬一瞬の充足に感謝することだと述べています。

④ 観察する自己

 「ACT」では、「思考する自己」2つの自己があると考えます。

思考する自己: 何かを考えることを司る自己。 計画、判断、評価、比較、想像、視覚化、分析、記憶、空想、妄想など。

「観察する自己」:集中、注目、気づきを司る自己。

瞑想でも仕事でも、集中している時の接続を切断するのが「思考する自己」であるならば、再接続するのが「観察する自己」です。

この「観察する自己」を集中的にトレーニングするのがマインドフルネス瞑想です。

呼吸に意識を向ける。やがて雑念がわいて意識がそれる。「あっ、それた」と、気づいたら、その時「観察する自己」が登場しています。そしてまた、心を静かに呼吸に意識を戻すのです。

「観察する自己」があるから、仕事で失敗をして「なんて自分はダメなんだ」とネガティブな思考に巻き込まれた時に、「あっ!また自分を責めている」と気づけます。

 「思考する自己」「観察する自己」の2つを使いながら、私たちは人生の質を高めるよりよい思考を育んでいきます。

⑤ 価値の確認

 「価値の確認」とは、「行動」するための「エンジン」になるものです。人は自分が大切していること、価値を置いていることであれば、行動する勇気がわき、その継続力が高まります。

価値とは

・心の中のもっとも深い欲望。何になりたいか、何を大切にしたいか、世界とどのように関わりたいかなど。

・人生を通して私たちを導き動機づける主要な原理。

 「ACT」は、「憂鬱な気分」に代表されるネガティブな症状の緩和だけを目的にするのではなく、その人の「人生がよりよくなる」助けをすることが真の目的です。

「価値の確認」は、カウンセラーなどと対話することもあれば、自問自答のセルフワークでも可能です。

価値を考える問い

・心の深い部分で一番重要だと考えていることは何だろうか?

・どのような人生を望んでいるだろうか?

・どんな人間になりたいだろうか?

・どんな人間関係を築きたいだろうか?

・自分の感情と戦ったり避けたりしてなければ、それに使っていた時間とエネルギーを何に注ぎ込むだろうか?

 この価値の明確化は、コーチングやキャリア・カウンセリングでも行われることですが、「価値」と「行動」はセットになっていて、「価値にもとづく行動」を重視し、考え出すのが「ACT」流といえます。

⑥ 目標に向かっての行動

 「目標に向かっての行動」は、実際に「行動すること」です。具体的な目標を考え、計画をたて、実行していきます。実際の行動を意識して計画を立て、それを着実にこなしていくのが「ACT」の最終ステップである「目標に向かっての行動」です。

「豊かで意味ある人生は行動によって作られる。だがどんな行動でも良いわけではない。それは価値によって動機づけられた、効果的な行動でなければならない。意味ある人生は、強い意志的行動によって、何度失敗しても、何度コースからはじかれても飽くことなく挑戦することによって築かれる。」

『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』(ラス・ハリス 筑摩書房)

4. まとめ

どんな心理療法にもクライアントによって相性があり、「合う」「合わない」があります。「ACT」は、「有効性」を大切にしています。「ACTが有効でない」と評価・判断したら、その他の療法を試してみるべきと、「ACT」の開発者、実践家たちは、大らかな態度をとります。

最後に

『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』(ラス・ハリス筑摩書房)

からの言葉を紹介します。

 人生は、思い通りにならいこともあります。その時生まれる「痛み」を拒絶したり追い払ったり

するのではなく、むしろ「受け入れ」実際に行動していくことによって事態はよくなっていきます。

「過去は存在しない。それは現在の記憶以上のものではない。

未来も存在しない。それは現在の思考やイメージでしかない。

あなたにあるのは現在この瞬間だけなのだ。

それを最大限に活かそう。

今何が起こっているのかに注意を払おう。

それを最大限に味わおう。

最後に覚えおいてほしい。

「人生は、与えられたものを最大限に活かす者にもっとも多くを与える」のだ。

お気軽に
ご相談・お問い合わせください

call052-526-3350

call052-526-3350

営業時間 / 月~金 10:00~18:00

お問い合わせ

株式会社ユース.ウェルネス

〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄2丁目9番26号 ポーラ名古屋ビル A館 5階

人事、総務部へのコンサルティングもサポートします。

みんなのメンタルヘルス|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp)

一覧に戻る

お気軽に
ご相談・お問い合わせください

call052-526-3350

call052-526-3350

営業時間 / 月~金 10:00~18:00

お問い合わせ