近年、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性が世界的に認識されつつあります。
しかし、日本と欧米ではその取り組み方に大きな違いが見られます。文化的背景や労働環境の違いが、メンタルヘルスに対するアプローチにも反映されているのです。
本コラムでは、日本と欧米の企業におけるメンタルヘルス対策の違いについて考えていきます。
目次
1.日本企業のメンタルヘルス対策の特徴
① 企業主導型の対策が中心
日本企業では、メンタルヘルス対策が「企業の義務」として捉えられる傾向があります。
厚生労働省のガイドラインに基づき、ストレスチェック制度が導入されるなど、企業側が従業員のメンタルヘルスを管理する仕組みが整えられています。
・ストレスチェックの実施(50人以上の企業で義務化)
・産業医やカウンセラーの配置
・過重労働対策としての勤務時間管理
こうした制度は一定の効果を上げているものの、「会社が従業員の健康を管理する」という考え方が強く、個人が主体的にメンタルヘルスを改善する文化はまだ根付いていない部分があります。
② 「休むこと」に対するハードルの高さ
日本の職場では、いまだに「長時間労働=頑張っている」という考え方が根強く残っています。
そのため、メンタルヘルスの問題が発生しても、「休むことは甘え」という風潮があり、休職やカウンセリングを受けることに対する抵抗感を持つ人が少なくありません。
また、上司や同僚に迷惑をかけることを避けるために、無理をして働き続けるケースも多く、結果的にメンタルヘルスの悪化を招いてしまうことがあります。
③ 「和」を重視する組織文化
日本企業では、チームワークや協調性が重視されるため、メンタルヘルスの問題を抱えた場合でも、できるだけ周囲に迷惑をかけないようにする傾向があります。これが「相談しづらい」環境を生み、問題の深刻化を招くこともあります。
2.欧米企業のメンタルヘルス対策の特徴
① 個人の責任としてのメンタルヘルス管理
欧米では、「メンタルヘルスは個人の責任」という考え方が一般的です。企業もサポートはしますが、最終的には従業員自身が自らの健康を管理することが求められます。
・メンタルヘルスの研修や教育の実施
・社内カウンセリングサービスの提供
・フレックスタイムやリモートワークの活用
・このように、従業員が主体的にメンタルヘルスを守るための制度が整備されています。
② 「休むこと」へのポジティブな捉え方
欧米では、有給休暇を積極的に取得し、仕事とプライベートのバランスを取ることが重要視されます。
「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を防ぐために、企業側も長時間労働をさせない仕組みを整えています。
・有給休暇の完全消化を推奨
・「メンタルヘルスデー」として特別休暇を設ける企業もある
・カジュアルにカウンセリングを受けられる環境が整備されている
また、心理的安全性の確保が重要視され、社員が自由に意見を述べられる風土があるため、メンタルヘルスに問題が生じた際も比較的早い段階で対策が講じられやすいのが特徴です。
③ ダイバーシティとインクルージョンの観点からのメンタルヘルス対策
欧米では、多様な価値観を尊重するダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)が重視されるため、メンタルヘルスの問題に対する理解も広がっています。
・LGBTQ+や障害者のメンタルヘルス支援の充実
・多様なバックグラウンドを持つ人々のメンタルケアへの配慮
・ハラスメント防止策の徹底
このような環境が整っているため、メンタルヘルスに関する悩みを抱えた人もサポートを受けやすいのです。
3.日本と欧米のメンタルヘルス対策の違いをどう活かすか
日本企業と欧米企業のメンタルヘルス対策には、それぞれ強みと課題があります。
日本企業では、企業主体の対策が整っているものの、個人が自発的にメンタルヘルスを管理する文化が根付きにくいという課題があります。一方、欧米企業では、個人の責任を重視することで、自主的なケアが進んでいる反面、企業側のサポートが不足するケースもあります。
今後、日本の企業が欧米の良い点を取り入れることで、より効果的なメンタルヘルス対策が可能になります。
・企業のサポートに加え、個人の意識改革を促す(セルフケアの重要性の教育)
・休むことの価値を再評価し、心理的安全性を高める環境づくりを進める
・ダイバーシティの観点を取り入れ、多様なメンタルヘルス対策を実施する
まとめ
日本と欧米の企業におけるメンタルヘルス対策には、次のような違いがあります。
日本:企業主導型、休みにくい風潮、和を重視する文化。
欧米:個人主体型、休むことへのポジティブな捉え方、ダイバーシティの考え方を活用。
今後、日本の企業も欧米の「個人主体のメンタルヘルスケア」の考え方を取り入れながら、よりバランスの取れた対策を進めていくことが求められるでしょう。
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