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PDCAだけにとらわれないマネジメント手法

~時代に合ったマネジメント手法を考える〜

長年企業で活用されてきたマネジメント手法のPDCAですが、現代は、環境変化が激しく複雑さを増し、将来の予測が困難な状況にあります。日本は改善を重ねてより良いものにする事には長けているが、新しい発想からの開発やイノベーションにおいては欧米に劣っていると感じる方も多いと思います。スピード感をもって新機軸を生み出すにはどうすれば良いのでしょうか。

目次

1. PDCAマネジメント

2.新しいマネジメント手法 ① OODAループ

3.新しいマネジメント手法 ② PDRサイクル

4.まとめ

1. PDCAマネジメント

1950年にアメリカの統計学者エドワーズ.デミングによってPDCAは、提唱されました。この時代の日本製品の製造工程、品質管理は、決して高いものではありませんでした。

その日本製品が高品質と世界から評価を貰えるようになったのは、PDCAの影響が大きいとされています。デミングの来日などもあり当時の日本の経営者は熱心にPDCAによるマネジメント手法を学びました。PDCAを導入して最も成功した例はトヨタ自動車です。「トヨタ生産方式」や「カイゼン」「5S」は、多くの企業でも取り入れられています。

PDCAは、日本の高度経済成長を牽引した優れたマネジメント手法である事は間違いありません。

PDCAは、

・Plan(計画):具体的な目標を立てる。

・Do(実行):計画通りに仕事を進め、その記録を残す。

・Check(評価):目標がどの程度達成できたかを分析。

・Action(改善):どの要因が成功、失敗につながったかを考え、成功要因は継続し、失敗の要因は捨てる。

より高品質な商品を生産するためには、効果的なマネジメント手法です。

PDCAのデメリット

  • 改善までのサイクルに時間がかかる

PDCAではしっかりとしたプランニングと評価や改善にも十分な時間をかけます。しかし製造工場の現場とは異なり、アップグレードや断続的にサービス提供を行っていくことが必要な、ITやDX化する多くのビジネスモデルではPDCAサイクルが合わないケースが起こっています。

  • 新しいアイデアが生まれにくい

PDCA手法では、実行した業務を評価して改善していくため、前例的になりがちです。前に実行して成功したことをなぞるだけで新しいアイデアの入り込む余地が無くなることもあります。

  • PDCAを行うのが大変

PDCAを行うには、多くの時間をそれに割く必要があります。場合によっては、PDCAを行うことが目的になっているケースもあります。それでは、いたずらに時間や費用、リソースを失うことになります。

2. 新しいマネジメント手法 ① OODAループ2

OODAループ(ウーダループ)とは、元々は勝敗に関わる意思決定と実行のための思考法の1つですOODAは、Observe(観察)・Orient(状況判断)・Decide(意思決定)・Act(実行)の頭文字4つで構成されています。主にビジネスシーンにおける、それぞれの段階での考え方や行動の例を以下に示します。

・Observe(観察):観察することによって現状を認識します。

たとえば、業界や顧客、競合、新しい技術、社内環境などの状況や変化に着目します。

・Orient(状況判断):観察結果から、状況判断します。

ここでは、Observe(観察)で得たデータから、次のDecide(意思決定)に必要な材料を見極めていくことが重要です。

・Decide(意思決定):具体的な方策や手段に関する意思決定を行います。

この時点で、判断材料の不足に気づけば、観点を変えて観察(Observe)に戻って、ループすることも可能です。

・Act(実行):意思決定したことを実行に移します。

実行後は、フィードバックするために再びObserve(観察)、または必要に応じて他の段階に戻り、ループを再開します。

OODAループのメリット

OODAは、文字通りループであるため、必要に応じて途中で前の段階に戻ってループから再開したり、状況に応じて任意の段階からループをリスタートしたりできることが大きな特徴です。

このように、Plan(計画)に基づいて1周するPDCAサイクルに比べ、OODAループは自由度が高く、変化に対応しやすいということが大きな違いといえます。

3. 新しいマネジメント手法 ② PDRサイクル

PDRサイクルは、ハーバードビジネススクールのリンダ・ヒル教授が提唱した考え方です。

・Prep(準備):これから何をしようか、その理由や目的を考えることで、直接的な数字目標ではありません。リンダ・ヒルはイノベーションを単なる新しいものではなく、斬新であると同時に有用性があるものと定義しています。その事業はどんな理由があって行われるのか、どのような目的があるのか、その有用性を考えることから始まります。

・Do(実行):PDCAと同じく、PDRのDもDo(実行)を表しています。Pの準備で考えた目的に合わせて具体的な行動を起こします。

・Review(評価):PDCAのCheckはミスがないか、不正がないかを確認することです。目標の達成度を高めるために、マイナスポイントを消していくというニュアンスが強いです。一方、Reviewはその業務を行った人以外に成果物を見てもらい客観的に評価してもらうこと。依頼されて作った商品をお客様に見てもらうこともレビューといいます。

PDRのメリット

・1回のスパンが短い

単純に考えて、PDRはPDCAより1段階少なく、なによりもPが計画ではなく準備であることが大きいです。

・改善も素早くできる

1回のスパンが短いPDRでは早い段階で改善点を見つけて、より理想的な形へと近づけます。

・目標達成が目的ではないため、改善が進みやすい

PDCAでは具体的な目標があるからこそ未達のプレッシャーがあります。高すぎる目標を設定した場合、なかなか達成できず、達成できずに終わることもおきます。目標が高すぎて不正を働いてしまう危険性もあります。PDRでも必ず理想的な状態になるわけではありません。しかし、トライ&エラーに比重を置いていますので、何度も繰り返すうちに結果的に早く高い目標を達成していることがあります。

PDRサイクルの場合、組織はもちろん、個人でも使いやすい手法です。また、どんな活動にも誰であっても可能性があり、Prep(準備)を追求すればイノベーションを生み出せるという考えでもあります。そのため、大きな事業においてももちろん有効ですが、小さなことでも使えます。

まとめ

フレームワークPDCAOODAPDR
要素Plan(計画)
Do(実行)
Check(確認)
Act(改善)
Observe(観察)
Orient(戦略)
Decide(決定)
Action(実行)
Preparation(準備)
Do(実行)
Revie(評価)
使う場面既存事業の改善明確な目標達成に向けた課題改善新規事業の開拓現場でのスピーディーな課題解決短期的なスパンでの課題改善
メリット明確な目標達成を実現組織全体で機能できるスピード感のある行動環境変化に柔軟に対応個人の裁量が大きい時間をかけずに明確な目標を実現

PDCAは古いと言われていますが、現在でも品質を重視し、長いスパンで作り上げていくビジネスには有効です。

ただVUCA(ブーカ)時代とも言われる、現在の多くのビジネスモデルには、スピーディーで汎用性のあるマネジメント手法が求められます。

観察をスタート地点としたOODA、準備を起点とするPDRなど、時期や階層を踏まえて

導入する事は有効です。そして組織、社員、顧客の間でのミュニケーションを活性化する事で更にダイナミックな潮流が生まれ、時代を切り開いて行く事が出来るのではないでしょうか。

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