名古屋生まれ メンタルヘルスケアサービス(EAP)の ユース.ウェルネスです。
職場で上司が部下に「なぜ!こんな事も想定できないんだ」と感じ、部下が上司に「そんなやり方は、古すぎるよなぁ」と感じる事が多いようです。また経営者は社員に「会社の方針を理解していない」と嘆き、社員は経営者に「理想論ばかりで現場が分かってない」と嘆く事も耳にします。このギャップを理解するのに「カッツ理論」がヒントになります。
目次
1. カッツ理論とは
カッツ理論は、ハーバード大学のロバートカッツ教授により発表された、組織で必要なスキルに関する理論です。1955年に発表された古い理論ですが、現在の組織教育でも役立つ理論です。
内容は、各階層のスキルにフォーカスされていますが、人材育成として捉えられる事も出来ます。
2. 3つのスキル
カッツ理論では、組織階層ごとで求められるスキルの内容とその割合が分かりやすく示されています。
1. テクニカルスキル(Technical Skills)
テクニカルスキルは特定の業務をこなす能力です。目の前のことをこなせる能力と言い換えても良いでしょう。
営業職であれば、プレゼンテーションを高いレベル実施する能力や提案書の作成方法に関する知識などがテクニカルスキルに当たります。
2. ヒューマンスキル(Human Skills)
他者との関係を作るためのスキルです。取引先や社内など良い人間関係が構築できるかどうかを左右する、全ての階層で重要とするスキルです。
新人であれば、上司に質問する能力であり、同期とのつながりを維持するコミュニケーション能力もヒューマンスキルになります。
マネジャーであれば、人材教育やチームビルディングのスキルなどがこのスキルになるでしょう。
経営層でも、社内、社外との関係性を作り、情報収集、発信のベースになるスキルです。
3. コンセプチュアルスキル(Conceptual Skills)
コンセプチュアルスキルは、目の前のタスクを超えた思考のことです。コンセプトを作る概念的なスキルで、過去、現在を基に未来を予測する能力でもあります。
会社の未来像を描いたり、課題を見つけて仕組みを変更したりする為には重要なスキルです。
マネジャーであれば、チームへの理念の浸透や新しいルールへの適用教育など全体を良くするスキルに当たります。経営層であれば、会社の将来像を描いて舵取りをするスキルです。
次の図(カッツモデル図)は、人材の階層ごとに必要なスキルセットの割合を表しています。
例えば、実務に携わるスタッフ(ロワーマネジメント)であればコンセプチュアルスキルは少なくても構わず、ヒューマンスキルとテクニカルスキルが必要になります。
反対にトップ(経営層)であれば、コンセプチュアルスキルが重要になります。
それぞれの階層で必要なスキルは、異なりますが、ヒューマンスキルだけは全ての階層で同じ割合で必要とされます。
3. 人材育成の指針
カッツモデルを使うと、人材育成の指針が立てやすくなります。「各段階に必要なスキル = それに伴う教育」が分かり、何を、なぜ、どのようにと組み立てて行けるからです。
① ロワーマネジメント(新人〜スタッフ)
新人からスタッフの段階では、ヒューマンスキルとテクニカルスキルが重視されます。
まずは目の前の実務ができることを優先します。
テクニカル:ヒューマン:コンセプト = 5:4:1次の割合で教育を検討すると
・企業理念と個人の成長の因果関係を理解させモチベーションを大事にする
・教育カリキュラムで先にゴールを明確にして目的を理解することで成長が早くなる
・飛び級できる人は飛び級させていき、個人のペースの成長に合わせる
・マナー研修だけでなくコミュニケーション研修も導入する
② ミドルマネジメント(管理者・部門リーダー)
部門リーダークラスであれば、コンセプチュアル面を高めていく段階になり、経営の視点も取り入れる必要があります。
テクニカル:ヒューマン:コンセプト = 3:4:3 の割合で教育検討すると
・教えることも仕事だという認識を持ってもらう
・部下の成長度合いで評価される仕組みを導入する
・チームビルディングに関する教育を行っていく
・コーチングやファシリテーションの研修を導入する
・改善案プレゼンして課題発見の視点を持たせる
③ トップマネジメント(経営層クラス)
経営層クラスであれば社内だけでなく業界内外との人脈や多角的な視点が重要になります。
テクニカル:ヒューマン:コンセプト = 1:4:5
・業務時間以外の時間を与え、理念や戦略を参画させる
・会社より良くしていく事が自分の仕事だと意識をさせる
・自分の力を伸ばす事よりも、全体最適化が評価される環境つくり
・業界のイベントや経営層の会合に参加して繋がりを広げる機会つくり
このようにどのステージにいる社員をどのように育成するかの指針で、重点を置くべき項目や割くべき時間に判断をつける事が出来ます。
指針に伴って教育カリキュラムが必要ですが、それぞれのスキルによって内容や注意すべき項目も変わります。
【テクニカルスキルの教育のポイント】
・成長後にどうなっていて欲しいのか明確に伝える
・期限を明確して、それ以上の速度で成長したら称賛する
・スキルごとに対応するマニュアルを用意する
・サポート資源としてメンターが定期フォローして悩みを聴く
・技術能力では、基準テストを作成して、合格・不合格をつけ確認する
◇ 教える側としては、次のポイント
・基本的に任せた教育者に一任する(飛び越えて直接指摘をしない)
・これにより教育者自身に責任を持たせて、教育者自身が育つ
・サポート資源としてスーパーバイザーを付ける
【ヒューマンスキルの構築のポイント】
ヒューマンスキルは個人的要因も影響するので、自己理解も重要になります。
・性格診断やアセスメントツールを使い課題が見える化する
・ヒューマンスキルの高い社員と接する機会を作る
・コミュニケーション研修を受講させる
◇上長が業務中に意識するポイント
・朝礼を元気に始める
・身だしなみを整える
・説明する時は、まず自分がやって見せる
・様子が変わった部下には、声掛けをする
・1on1で部下の話を聴く時間を作る
・時々、仕事以外の雑談をする
【コンセプチュアルスキルの向上のポイント】
コンセプトを作るには、知識と経験が必要で高い能力が求められます。会社の経営を担うであろう層に求められるスキルです。
管理者には、コンセプト作るだけでなく、部下に語り、浸透させる能力を身に付け、実行する経験も必要です。
〇実施すべき教育のポイント
・担当部署の年度方針を作成して発表する
・経営会議への参加権限を渡し、必ず発言機会を増やす
・数字をオープンにしてのマネジメント思案をレポートする
・システム修正の案をプレゼンする
・理念合宿、管理職イベントへの参加
・同業、異業種の交流会への参加
4. まとめ
新入社員にコンセプチュアルスキルを求めて理解をしてくれたとしても、使う機会がなかなかないし、目の前の仕事をこなすのに必死でそれどころではないでしょう。
逆に経営層に技術を深める研修を受ける時間をたくさん作っても、狭い範囲の知識だけでは、会社の舵取りに活かせるスキルにはならないでしょう。
カッツ理論はシンプルながら使い勝手がいい理論です。各ステージに伴って、それぞれの教育を対象者に提供していくことで、無駄なく人材が育成でき、企業自体の成長も早くなっていく事が期待できます。自社の人材育成プログラムを作成するときの参考にしてみてはいかがでしょうか。
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